決算が終わり損益計算書が確定すると、次は予算について考える必要があります。そのため経営者は損益計算書を分析しなくてはなりません。そこで覚えておくべきなのが「固定費」と「変動費」の2つ。これらの違いや求め方を解説していきましょう。
損益計算書とは
損益計算書とは、1年間でどれだけの売上や仕入があり、事業運営のためにどれだけの経費がかかったのか、そして最終的にいくらの損益が出たのかをパッと見ただけでわかるように記載しているものです。
また損益計算書には以下の5つの損益を表示し、より詳しく経営状況を確認しやすくしています。
- 売上総利益
- 営業利益
- 経常利益
- 税引前当期純利益
- 当期純利益
この中でも経営時に見られやすいのは売上総利益や営業利益、当期純利益といったところでしょう。確かにそれらも経営状況を分析するため、大事な指標です。
しかしもう一つ大事な指標があります。それは損益分岐点と呼ばれる数値です。ただ損益計算書を一目見ただけではわからない数値なので、まずは損益分岐点の考え方や計算方法の解説をしましょう。
損益分岐点とは
損益分岐点とはその名の通り、「売上がある金額に達すれば黒字、達しなければ赤字」と分岐する金額のこと。特別な事情がない限りは、利益を黒字にしなくては経営を続けることはできませんから、損益分岐点を理解しておくことはとても大事です。
損益分岐点の計算方法
まずは計算式をご紹介しましょう。
※変動費率とは売上のうちの変動費の割合
こうみるとパッとわからないかもしれませんが、大事なのは固定費と変動費です。その数字がわかればとりあえず損益分岐点の計算が可能です。
損益分岐点の考え方
損益分岐点の計算式を少しだけ解説していきましょう。まず変動費は売上額と比例しますので、売上額から変動費を引いてしまいます。それが分母の「1-変動費率」の部分です。
そして変動費を引いて残った売上で、固定費をカバーできていれば損益は0となるわけです。このようにして売上と経費が同額になる、損益分岐点を計算するのです。
固定費・変動費はどれ?
では早速損益分岐点を求めるため、固定費と変動費の考え方を簡単に紹介していきましょう。
変動費とは
変動費とは売上に従って金額が変わる経費のこと。例えば材料費や売上原価、外注費など売上に直結する経費があるかと思います。売上を上げるためにはなくてはならないものが変動費、と考えておけば良いでしょう。
固定費とは
対して固定費とは売上には直結しないものの、経営をする上で必要となる経費のことです。例えば賃料や給与、備品費、交際費などをさします。これらのどれか一つかけても経営はできませんが、売上額にそのまま直結する経費ではないでしょう。
同じ科目でも変動費・固定費を分類する必要がある
例えば光熱費という勘定科目でも、内容は変動費と固定費に分類されることがあります。建設業であれば工事自体に光熱費が関わっていることもあれば、経営のための事務所で光熱費が関わっていることもあります。このような理由から、工事にかかる光熱費は変動費ですが、事務所の光熱費は固定費と分類されます。
そして同じ科目でも変動費と固定費に分類しなくてはならない場合、計上時から分類することが大事です。例えば科目に「光熱費(変」「光熱費(固」と入れたり、補助科目を利用して「変動費」「固定費」や「原価」「販管費」などのように入れたりしても構いません。いずれにしても、計上段階からどちらに入るのかの意識はしておきましょう。そうすることで損益分岐点が求めやすくなります。
資金繰りと損益分岐点の関係
損益分岐点がしっかりわかっていれば資金繰りもOK、と思われている経営者さんは多いことと思います。しかし実は損益分岐点以上の売上をあげながらも、資金繰りがうまくいっていないことも多くあるのが実情です。そこで資金繰りと損益分岐点の関係やキャッシュフロー計算書について、以下に詳細に記載しています。ぜひ一度お読みください。
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損益分岐点や資金繰りの計算上、減価償却費の考え方とは?固定費との違い)
損益分岐点の計算も代行で
経営初期ほど損益分岐点の考え方は大事と言えます。なぜなら売上に直結する費用をやみくもに削減してしまっては、売上減に繋がる可能性が高いからです。
例えばこんな事例が考えられます。固定費や変動費を分類せずに全て固定費(PL上は販管費として記載されることが多い)としていた運搬費が大きいため削減した結果、お客様からの評判が悪くなり売上が下がる。これでは損益計算書を作ったり、損益分岐点を計算したりしても、悪影響となってしまっています。
そこでまだ経理業務に慣れていなかったり、経営にどのように損益計算書や損益分岐点を生かせば良いかわからなかったりするときには、経理業務から全て一度代行を頼んでみることをお勧めします。
申告書の作成とともに経理業務を代行してもらいつつ、最終的に経営判断に用いることができるような計上の仕方をしてもらえば良いのです。そうすれば起業したのに主な事業以外のことで忙しい、ということは避けることができるでしょう。
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まとめ
- 黒字であり続けるため損益計算書の分析は必須
- 損益分岐点も計算する
- 計上時から固定費と変動費を意識する
ここまで損益計算書や損益分岐点、変動費、固定費などについて解説してきました。とはいえ、なかなかわかりづらい部分ではありますので、まずは専門家への相談をお勧めします。
そこで、ぜひ一度私ども税理士法人GrowUpへご連絡いただければと存じます。最後までお読みいただきありがとうございました。