預り金や立替金、前受金などの似た勘定科目は、どのような違いがあるのかわかりづらいですね。
そこで預り金や立替金などの勘定科目の違いと実際にどんな時に使うのか、実際の仕訳と一緒に解説していきましょう。貸方、借方のどちらで使うのかも含めてわかりやすく説明しますので、ぜひご一読ください。
預り金、立替金、前受金の違いと仕訳例
預り金と立替金、前受金はどれも似ていますが、意味は全く違いますのでしっかり覚えておきましょう。
預り金と立替金、前受金の違い
預り金:従業員や取引先が負担すべきものを、一時的に預かっている
立替金:従業員や取引先が負担すべきものを、一時的に支払っている
前受金:売上になる予定のもので、先払いしてもらっている
このように預り金と立替金は、損益に関係ない科目です。対して前受金は、売上に関わる科目なので、その違いはわかりやすいかと思います。そして預り金と立替金は、誰がその支払いを負担すべきなのかが違うということです。
預り金の仕訳例
預り金は「会社が預かっており、最終的にはどこかへ支払いをしなくてはいけない」時に使用する勘定科目です。そのため従業員の社会保険料や住民税、源泉所得税などを預り金として処理します。
<仕訳例>
給料を40万円支払い、うち5万円を社会保険料等として預かる。
借方勘定科目 |
借方金額 |
貸方勘定科目 |
貸方金額 |
給与 |
400,000 |
普通預金 |
350,000 |
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|
預り金 |
50,000 |
立替金の仕訳例
立替金は「従業員が支払うべきだが、タイミングや手持ちなどの理由で一時的に会社が支払っているもの」に使用する勘定科目です。セミナー受講費や資格の受験費用など、会社で一括申し込みしているが最終的に従業員から支払ってもらうような費用を立替金として処理します。
<仕訳例>
セミナー受講費1万円のうち、会社と従業員で折半すると決まっているが、従業員からは来週代金を支払うと言われており、一時的に全額会社が支払いをした。
借方勘定科目 |
借方金額 |
貸方勘定科目 |
貸方金額 |
研修費 |
5,000 |
普通預金 |
10,000 |
立替金 |
5,000 |
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前受金の仕訳例
前受金はいわゆる手付金や内金に該当します。商品やサービスを引き渡す前に、契約金の一部もしくは全部を事前に受け取った場合に、前受金で処理をします。
また前受金に似た勘定科目として、前受収益や仮受金があります。こちらについては参考記事をご確認ください。
(参考記事:
『前受金、前受収益、仮受金の違い。先にお金を受領した時の仕訳勘定は?』)
<仕訳例>
50万円のソフト制作を受注し、さらに手付金として10万円を受け取った。
借方勘定科目 |
借方金額 |
貸方勘定科目 |
貸方金額 |
普通預金 |
100,000 |
前受金 |
100,000 |
ソフトが完成し取引先へ納入し、同時に残りの代金も支払われた。
借方勘定科目 |
借方金額 |
貸方勘定科目 |
貸方金額 |
前受金 |
100,000 |
売上 |
500,000 |
普通預金 |
400,000 |
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預り金は貸方?借方?
預り金は貸方と借方、どちらに計上すべきかわかりづらい科目です。必ず現預金と連動しているわけでもないので、計上時に貸方?借方?となりやすいでしょう。そこで3つのポイントを覚えておきましょう。
預り金は流動負債
まず覚えておいて欲しいのは、預り金は負債である、ということです。そうすれば預り金が増える場合は貸方、減る場合には借方と判別がつきやすくなります。
相手科目を先に確定させる
負債の増減で考えてもわからない時は、一緒に計上する別の科目が貸方か借方かを考えます。先に他の科目と金額を埋めてから、貸借が一致するように預り金を計上すれば良いのです。ただしこれは緊急的な用法で、あまりお勧めできる方法ではありません。
自社で使う預り金のルーチンを覚えてしまう
会社によって預り金を使用する場面は変わるでしょう。社会保険料や税金などの預かり以外に、預り金を使用することもあります。しかし急に預り金が出てくることはあまりありません。そこで預り金を使用する場合の仕訳のルーチンを覚えてしまうのも良いでしょう。
その場合には、最初に覚える形が大事なので、ぜひ一度私ども税理士法人GrowUpへご連絡ください。貴社に合った預り金の計上方法やルーチンを整備します。もしくは経理代行にてご依頼いただければ、もう預り金計上で悩むことはありません。
預り金がマイナスになる場合
預り金は貸方にも借方にも計上するため、預り金がマイナスとなってしまうことも考えられます。特にマイナスになりやすいタイミングは、年末調整後です。年末調整で役員や従業員へ還付した所得税の源泉徴収額が、預かっていた金額よりも多い時には預り金がマイナスになってしまいます。このマイナス分は、次月以降の所得税納付から差し引くことで相殺します。
そのため12月が決算月の場合には、預り金がマイナスのまま決算を迎えてしまうでしょう。しかしそのまま決算書を作成するわけにはいきません。そこで年末調整後の預り金のマイナス分は、立替金に振り替える必要があります。
なぜなら「役員や従業員が支払うべき所得税」を預り金と計上しているため、預り金がマイナスになるということは「税務署が返金すべき所得税を会社が立て替えている」からです。
このように預り金のマイナスには意味がありますので、しっかりと預り金の増減が把握できるようにしておきましょう。
まとめ
- 預り金と立替金は損益に関わらない科目、前受金はのちに売上金
- 従業員や取引先が支払うべきもので、会社が後ほど支払うものは預り金、会社が先に支払っておいたものは立替金
- 預り金は貸方、借方どちらにも計上されるため、計上のたびに判断が必要
- 預り金がマイナスになることもある
ここまで預り金や立替金、前受金の違いや仕訳例、預り金は貸方、借方のどちらで計上するのかなどを解説してきました。しかしどれも初めて扱うには難しい科目が多いことでしょう。さらに決算月をまたいだ場合には、別の処理が必要なこともあります。
しかし決算時の処理は毎月発生するものでもなく、なかなかルーチン化は難しいでしょう。そこで私ども税理士法人GrowUpへご相談いただければ、経理業務から申告業務までノンストップで代行可能です。どこでつまづきやすいのかお伺いしながら、どこをお手伝いしたらよいのかご提案できますので、まずは一度ご連絡ください。
ここまでお読みいただきありがとうございました。