定額減税がスタートしました。給与計算担当者の中には、今年は年末調整が2回あるようなイメージを持っている方もいるでしょう。そこで本記事では、給与計算担当者として今できることについて解説します。スタートさえしっかり押さえれば、年末にやってくる「年末調整業務」も対応できます。
定額減税とはなに?
定額減税とは、政府が経済政策のひとつとして行う制度です。1人当たり所得税が3万円、住民税が1万円減税される制度になります。政府は、この4万円を新たに物を買う「消費」につながることを期待しています。
定額減税の対象者
今回の定額減税は、すべての人が対象なのではなく一定の基準が設けられています。その基準は以下のとおりです。
- 日本国内に住所がある
- 年間の合計所得が1,805万円以下
また、定額減税は給与所得がある従業員本人だけではなく、年末調整では対象にならない16歳未満の子どもについても給与所得者の扶養対象になります。
定額減税の計算方法
給与計算担当者は、従業員一人ひとりの給与にかかる源泉所得税から3万円の減税分を控除して計算しなければなりません。たとえば、6月分の給与や夏の賞与で控除しきれなかった場合は、翌月以降も控除を繰り返さなければなりません。
給与所得者の場合、源泉所得税を毎月控除する「月次減税」を行います。また、副業をしている方や2カ所から給与の支給を受けている方(従たる給与)は主たる給与と言われるメインの給与からのみ控除が受けられます。そのため、給与計算担当者の方も副業に関する質問を従業員から受けた場合、副業や従たる給与の定額減税は、会社では実施できないと説明しておきましょう。
また、副業や従たる給与の所得がある方で3万円の定額控除額が上限まで控除しきれなかった場合、確定申告することで残りの減税分を控除することが可能です。
1年間で引ききれない控除額はどうなるのか
1年間で控除しきれない税額がある場合、調整給付金の対象になります。ただし、調整給付金は会社が支払うものではなく、対象者が市区町村から受け取る給付金です。そのため、経理担当者が調整給付金の金額を計算し従業員へ支払うことはありません。
対象者への通知は市区町村が実施するため、従業員から質問を受けた場合には、市区町村へ問い合わせるよう回答しましょう。また、市区町村によっては「調整給付金」ではなく「補正給付金」という名称を使用している場合があります。
給与計算担当者がすること
現時点で給与計算担当者ができることは、給与明細の備考欄に減税額の記載漏れがないかチェックすることです。給与計算ソフトを使用すれば、定額減税に対応した給与計算は可能です。しかし、使用するソフトによっては、記載できないものもあるため必ず確認しておきましょう。
また、納付書への記載額は定額源是後の金額を記載します。そのため、従業員の数や給与額によっては税額が発生しないことも考えられます。納期特例の場合は、1月から5月までの源泉徴収税額を納付しなければなりません。あくまでも定額減税は6月支給分の給与から控除する制度です。減税が受けられるのは6月以降分なので注意しましょう。
住民税はどうなるのか
住民税の場合は、年間で受けられる減税額の1万円をその年に納める年税額から控除します。その後、残額を6月分は納付せず7月以降の11カ月で按分して納付します。
源泉所得税のように、7月以降も減税を受ける方法とは異なるため注意が必要です。また、新入社員の場合、前年の所得がない場合が多く住民税が発生していないことが一般的なため、住民税の定額減税の対象からは外れます。もし、新入社員の方から質問を受けた場合には「前年の所得がなければ住民税の控除の対象外」という旨を説明しましょう。
煩雑な給与計算に対応するためには経理代行の活用が有効
今回のように、急きょ定額減税が実施される場合には、システムの対応が追い付いていない場合があります。また、年末調整での処理方法を考えると、今から「大変かも」と警戒してしまう担当者の方もいるでしょう。
煩雑になりがちな給与計算を正確に実施するためにも、経理代行の活用を検討してはいかがでしょうか。税制に詳しい担当者が、従業員一人ひとりの給与計算をミスなく実施します。
定額減税は、現状1年のみの制度ですが、今後も日本の景気次第で似たケースが発生する可能性も否定できません。そのときに慌てる必要がないよう、今の段階から検討しておくことをおすすめします。